Topics

USCPAとしてアメリカで働くことの現実性

2018年4月9日
  • 時事ニュース
  • 海外

2017年9月17日 / 最終更新日:2018年4月9日

以前、アジアの会計事務所における日本人の役割と仕事内容というTopicで記事を公開しましたが、USCPA(米国公認会計士)なんだからアメリカについて書いてくれ、という声をちらほらと頂きましたので、今回はアメリカをテーマに挙げさせて頂きます。

これまでUSCPA合格者や学習中の方から、「アメリカで働きたいんだけど、どんな求人ありますか?」「どのようにアメリカの求人を探したらよいですか?」などのご相談も頂いてきましたが、やはりUSCPAを目指す方の中には、アメリカでの就業を志している方も数多くいらっしゃることと思います。

弊社SACTでは原則としてアメリカ勤務の求人を扱っておりませんが、アメリカで働いているUSCPA、会計事務所を運営しているUSCPAの方々から頂く話をベースに、移民政策や就労ビザ等の情報を絡め、筆者の見解を書き綴っていきたいと思います。尚、既に就労ビザを所有しアメリカで働いている方、グリーンカード保有者向けの記事ではなく、日本からアメリカ勤務という点で書かせて頂きます。

■アメリカの会計事務所では会計・税務・監査等の実務面に関わることが多い

アジアの会計事務所では、会計・税務・監査等の実務面に関わることは少ない、と触れさせて頂きましたが、アメリカの会計事務所においては実務に直接関わることが多いです。法人・個人確定申告作成をしたり、監査人として田舎にある工場の実地棚卸の立ち合いに行ったりなど、会計・税務・監査そのものの業務ラインに入る形です。

これはローカル採用の人件費が安いアジアと、人件費の高いアメリカ等の先進国との違いによるものと思われますが、日系企業を中心に顧客を持つアメリカの小規模~中規模の会計事務所においては、事務所内における日本人の比率が高いです。

もちろん大手Big4会計事務所では、『Japan Desk』『Japan Practice』などと呼ばれる日本企業専門のセクションがあり、そこでは日系企業の窓口やコーディネーション業務をメインとし、実務に関わることは少ないのですが、監査や税務などの実務部隊に入って活躍されているUSCPAの方も数多く存在します。

■『現地採用』と『日本採用からの海外駐在』について

本題に入る前に、アメリカに焦点を絞りつつも、広義では海外勤務となりますので、その海外勤務の形態についても少しだけ触れておきますが、大きく分けて、『現地採用』と『日本採用からの海外駐在』に分けられます。

『現地採用』とはその名の通り、海外現地法人で採用され、雇用主は現地法人となることを意味し、その雇用契約などは現地の法規制に準ずることになりますので、もちろん日本における被保険者資格は喪失することになります。

『日本採用からの海外駐在』についても、その言葉通りの意味となりますが、雇用主は日本国内の企業で、その企業から海外現地法人に出向という形になります。転籍出向のケースは除きますが、被保険者資格がそのまま維持されることになります。

その他違いは多々ありますが、テーマの趣旨から外れますので、この点はこれくらいで。

■アメリカ勤務に立ちはだかる就労ビザという大きな壁

さて、ようやく本題に入っていきますが、外国人が日本で働くのと同じように、日本人が外国で働こうとする場合、必ずビザ(査証)の取得が必要になります。

大手Big4を含め、会計事務所はほぼ『現地採用』に限られますが、アメリカで『現地採用』で働く場合、特殊なやり方を除けば、通常H-1Bビザ(専門職ビザ)を取得する必要がありますが、この取得が非常に困難で、不備なく申請書類を出せば取得できるものではなく、『運』に左右されるものとなっています。

具体的には、H-1Bビザ発行の年間上限枠数65,000件(+マスター枠20,000件)に対して、2017年4月から受付を始め、5日間で約20万件(マスター枠含む)の申請があったとのこと。そこからコンピュータによる抽選が行われ、当選した人のみその後の審査に進めます。

2016年の申請数は236,000件でしたので、それに比べたら2017年は当選率が上がった、また、来年も申請数は減るとも予想されているので、確率は高まるかもしれません。

ただ、アメリカが現トランプ政権になってから移民政策が厳しくなり、上限枠を減らす、コンピュータによる抽選形式が廃止される、高給与の人間を優遇するなどの動きが見られているため、ますますH-1Bビザ取得が困難となり、実質的に使えないビザとまで言われています。

尚、H-1Bは誰でも申請できるわけではなく、学位と職務内容が一致していることが条件です。例えば、「アメリカで会計の仕事をするのに外国語学部出身です」はNGです。学位が異なる、若しくは短大卒等の場合は、その専門分野の仕事に最低6年間従事していることが求められます。

■会計の知識や経験を持った日本人は圧倒的に不足している

アメリカ現地のBig4に関しては情報が不足しており、何とも申し上げられないのですが、アメリカ現地に所在する小規模~中規模の会計事務所に関しては、アメリカ現地の転職エージェントや事務所を運営している公認会計士やUSCPAの方々から話を聞いた限りでは、会計の知識及び経験を備えた日本人はかなり不足しているとのこと。

現地アメリカで、就労ビザやグリーンカードを持った日本人を採用するとなると、かなりの高コストとなり、採用そのものができずに苦しんでいる事務所もあれば、筆者自身も少し関わってきたという経緯もございますが、現地での採用を諦め業務を他の国にアウトソーシングして、人員採用以外の方策で何とか凌いでいる、という事務所もあります。

ただ、人手不足とは言え、H-1Bビザ取得の困難さや運不運に左右される状況から、ビザ取得申請にかかる費用(弁護士料、申請料など)を出してまで、ビザを保有していない人間を日本から連れてこようという事務所は、ゼロとは言いませんがかなり少ないのが現状です。

■インターンの可能性について

アメリカの会計事務所の採用ページでたまに見かけるインターンの募集。ここ最近関わってきたUSCPA(学習中の方含む)の方で、アメリカで働きたいという方の多くが、このインターンを選んでいます。

インターンの場合は、J-1ビザというインターン、研修生用のビザを取得する必要がありますが、雇用主(スポンサー)さえ見つかれば、他の労働ビザに比べて取得しやすく、手続きも費用の負担が少ないものになります。

ただし、「最長18ヶ月まで」という制限があり、このJ-1ビザは延長はできません。それ以上アメリカに滞在して働くためには、H-1B等への切り替えが必要となりますが、上述のとおり抽選を行いますので運に左右されることとなりますし、今後審査が厳しくなることを考えると、切り替えはより一層厳しくなることと思われます。

尚、J-1ビザ取得者には、2年以上アメリカ国外で生活しない限り他のビザの申請ができないという「2年ルール」があるようですが、その「2年ルール」を回避する方法もあるようです。これに関しては、確かな情報は把握していないため、「2年ルール」というものがあることだけ情報としてお伝えしておきます。

アメリカで働く(「働く」という言い方は相応しくないことと思いますが)現実的な選択肢の一つが、このインターンになることと思います。

もちろん、18ヵ月という期間限定であること、有給で仕事はできるものの高額な報酬は期待できないことなどのマイナス要素もあります。

J-1ビザの発給自体に年齢制限はないものの、インターンや研修生という意味合い上、30代までが現実的な年齢ライン(であると以前伺ったことがあります)でもありますし、上記のマイナス要素も考えると、20代の若い方にはお勧めはしやすいのですが、30代の方にはリスクの方が大きいと考えています。

■日系グローバル企業からアメリカ駐在という流れ

『日本採用からのアメリカ駐在』というパターンについても、触れていきたいと思いますが、前提になるのは、日系グローバル企業であること。日本に所在する外資系企業に入社しても、短期のトレーニングや出張ベースでアメリカに行く機会はあれど、駐在となる可能性は極めて低いです。

先にビザについてお伝えしたいのですが、この場合、Lビザ(企業内転勤者ビザ)、Eビザ(貿易駐在員・投資家ビザ)など、ビザとしては日系グローバル企業であれば、比較的容易に取得可能なビザとなりますので、ビザが大きな壁になることはありません。

ただ、USCPAを活かせる分野で、日本で採用された後にアメリカに確実に行ける、という求人がそもそも存在するのかというと、あまり存在せず、レア求人の部類に入ります。

日系グローバル企業で入社早々にアメリカ駐在を前提とした経理財務系の求人を、これまでいくつか扱ったことはございますが、管理職レベル且つアメリカ駐在経験を持つハイスペック人材を求めるもの、また、ロースペックの求人であっても、人気が高く競争率が高いが故に、最終的に採用されるのはハイスペックな方に落ち着くことも多いのが現状です。

また、大手グローバル企業では海外駐在を前提に経理財務で人材を採用することも多いのですが、必ずアメリカに行けるとも限らず、他の国や地域を打診されることもあり、いつ、どのタイミングで辞令が出るか分からないですし、基本的に辞令が出たら従わないといけないですからね。

社内で海外駐在のローテーションがあって、海外に送れる人材を多く抱える業界大手クラスの会社よりも、社内に海外駐在人材が少ない中規模クラスの会社の方が、「アメリカ駐在」に限定した求人が出やすいことと実感しております。

日本のBig4(監査法人や税理士法人)で採用されて、後々アメリカへ、というパターンもなくはないです。本人の希望がない限りは他の国や地域に(半)強制的に活かされることはないのですが、アメリカ勤務は人気があり競争率が高いのがネックでかなり狭き門になります。

以前Big4への転職を支援したUSCPAの方で、入社数年後にアメリカ西海岸の事務所に移ったという話や、アメリカ東海岸の事務所にUSCPAが2名移りましたよ、という話をBig4勤務中のUSCPAの方から伺ったこともございますので、チャンスが全くないというわけではありません。

■最後に・・・

その他、アメリカの大学、若しくは大学院を卒業後、OPT(Optional Practical Training)プログラムを使って、F-1ビザ(学生ビザ)のまま1年間働くという手もありますが、これは留学を挟んでいるので割愛します。

時期としては不明確ですが、リーマンショック後2010年代の前半は、H-1Bビザの取得がしやすく、アメリカ勤務がしやすい時代もあり、数多くのUSCPAがアメリカに羽ばたいていきましたが、残念ながらその時代は既に終わっています。

アメリカ勤務をターゲットとした場合、移民政策におけるビザの制限が一番の問題となります。アメリカに限らず、欧米等の先進国では、「移民制限=自国民の雇用を守る」という風潮が強まっていますので、風向きは決して良いとは言えません。これまで移民に関してオープンな姿勢であったオーストラリアでさえも、今年から移民政策を転換し、移民制限の方針にシフトしている状況です。

ここ2年間くらいの事例として、日本でしっかりと実務経験を積んだUSCPAの方が、H-1Bビザ取得のサポートを前提にアメリカの会計事務所で内定をもらい、その後の抽選が当たって申請も受諾されて渡米したという事例もありますし、日系中規模クラスの会社でアメリカ駐在員としてのポンポイント募集で入社し、数か月間の日本勤務後に駐在したという事例もありますが、レアケースという印象は否めません。

現実的には、「J-1ビザでインターンとして期間限定でアメリカで働く」、「日系グローバル企業に入って、上司にアメリカ勤務の希望を訴え続けチャンスをもぎ取る」という二つのパターンで、少ないチャンスながらも可能性として残るのが、「H-1Bビザ取得のサポートを前提に募集をかけているアメリカの会計事務所を狙う(ビザ取得の可能性が極めて低くなりましたので、今後先細りしていくかもしれません。)」「日系中規模クラスの会社でアメリカ駐在前提の求人を狙う」という形になることと思います。

ただ、これだけは最後に言いたいのが、時期やタイミング、運不運に左右されることはあれども、経理や会計人材としてアメリカ勤務を望むのであれば、USCPAの取得は有効であることは間違いありません。

アメリカ駐在前提の求人に応募した際の、他の応募者との差別化要素の一つでもありますし、社内競争の中においても、他の海外勤務候補者との差別化を図る上で、USCPAの取得は重要なファクターであるとも考えています。USCPAに合格してアメリカ赴任のチャンスを社内でもぎ取ったという声を多方面から頂いているのも事実です。また、2018年現在はまだ議論中ではありますが、永住権(グリーンカード)の申請をポイント制とする動きもあり、そうなった場合、USCPAがポイントの一つとして加算される可能性(筆者の希望的観測)もありますし。

以上となりますが、「就労ビザ(H-1B)の取得は簡単ですよ」という、誤った(or 情報が古い)記事が検索上位で散見されたため、それを正す(or アップデートする)という意味で、厳しめな表現を用いさせて頂きました。当然ながら筆者の私見も含まれておりますので、鵜呑みにすることなく、あくまでも参考として捉えて頂けますと幸いです。

明るい話題ではなく、且つ長文乱文にもかかわらず、最後までお読みいただき有難うございました。

※2018年4月更新

≪USCPAキャリアナビ≫では・・

USCPA(米国公認会計士)試験合格者及び学習中の方の転職サポートを行っています。転職活動のサポートから長期的なキャリアプランのご相談まで承っておりますので、まずは気軽にご相談ください。

無料転職登録

Pick Up Topics

履歴書・職務経歴書の添削アドバイス時の”あるある”ポイント
  • USCPA全科目合格
  • 転職ノウハウ
   
   
USCPAの監査法人転職事例と考察(2019年上半期 Ver.)
  • USCPA全科目合格
  • 会計アドバイザリー
  • 会計監査
  • 時事ニュース
  • 監査法人
   
   
【USCPA合格体験記 Vol.4】早期合格を目指して退職~全科目同時受験&同時合格(2018年6月合格)
  • USCPA全科目合格
  • USCPA勉強方法
  • USCPA試験
  • 合格体験記
   
   
移転価格コンサルティングに転職した事例のまとめ
  • USCPA全科目合格
  • USCPA科目合格
  • 移転価格
  • 税理士法人
  • 転職ノウハウ
   
   
USCPAを取り巻く転職市場の変遷(その①:2005年~2008年)
  • コンサルティング会社
  • 会計監査
  • 監査法人
  • 転職情報
   
   
アジアの会計事務所における日本人の役割と仕事内容
  • 会計アドバイザリー
  • 海外
  • 転職情報
   
   
一覧に戻る

新着記事

1
監査法人の金融監査部門でUSCPAの求人が多い理由
2019/08/16
  • USCPA全科目合格
  • 会計監査
  • 監査法人
  • 転職情報
   
   
2
履歴書・職務経歴書の添削アドバイス時の”あるある”ポイント
2019/08/09
  • USCPA全科目合格
  • 転職ノウハウ
   
   
3
移転価格コンサルティングに転職した事例のまとめ
2019/08/05
  • USCPA全科目合格
  • USCPA科目合格
  • 移転価格
  • 税理士法人
  • 転職ノウハウ
   
   
4
USCPA合格後の転職先(その①:プロフェッショナルファーム)
2019/07/29
  • USCPA全科目合格
  • コンサルティング会社
  • 監査法人
  • 税理士法人
  • 転職情報
   
   
5
アジアの会計事務所における日本人の役割と仕事内容
2019/07/29
  • 会計アドバイザリー
  • 海外
  • 転職情報
   
   

コンサルタントに相談

1000人以上の転職を支援してきたUSCPA専門のコンサルタントが徹底支援します。

無料転職登録