Topics

2017年のUSCPAの監査法人転職市場の振り返りと2018年はどうなる?

2017年12月17日
  • USCPA全科目合格
  • 会計アドバイザリー
  • 会計監査
  • 時事ニュース
  • 監査法人

今年も残すところあとわずかとなりました。

2017年は第2Qのテスティングウインドウから始まった試験制度変更に伴い、試験の結果発表まで長く待たざるを得ない状況で、受験後の自己採点で合否判定ができる試験でもないため、学習のスケジュールも立てにくかったことと思いますし、この12月19日の試験発表を首を長くして待っていた方もいらっしゃったことと思います。

USCPA新試験では、MC問題の出題比率低下とTBS問題の配点率の増加、DRS(Document Review Simulation)問題追加等で見られる実務的な問題の増加、科目間を横断するような出題、BECとREGの試験時間が3時間から4時間に変更、など、旧試験では順調に科目合格を積み重ねたものの、従来の学習方法では対応しきれず、新試験で躓いてしまった方もいらっしゃったのではないでしょうか。

その試験制度変更という過渡期の中であっても、日々の努力が実り、無事合格を果たされた方の転職支援を行って参りました。1年を締め括る上で、この2017年のUSCPA転職市場、特に弊社が情報収集に力を入れている監査法人の転職市場を振り返るとともに、来年2018年の動向についても触れていきたいと思います。

※注:こちらの記事は、IT系職種(IT監査、セキュリティなど)やアナリティクス、バックオフィス分野などは含めておらず、監査・会計系分野に関して記したものです。監査法人全般の募集について記しているものではございません。

■2017年のUSCPAの監査法人転職市場の振り返り

総じて評価すれば、2014年から続く売り手市場が続き、2017年も数多くのUSCPA全科目合格者、科目合格者が監査法人に転職され、監査法人の転職市場は活況とも言える1年でしたね。

会計不祥事が相次いだことを背景に、各監査法人が監査品質の向上に向けた取り組みを進めている中、従来以上に厳格な監査手続きを行う必要性がありながらも、現場で監査業務を担う会計士が不足している状態が続いたため、監査部門では積極的な採用を行ってきました。

また、各法人ともアドバイザリー事業部門の拡大を推し進めていますが、人手が不足している監査部門から人員を異動させることも難しく、外部からの人材採用に頼らざるを得ない状況が続きました。アドバイザリーに関しては、特にIFRSに関わるプロジェクトにあてがえる人材の採用が目立ち、細かいものですが、保険契約に関する新基準(IFRS第17号)が公表されたことも地味ながらも1つのトピックとなりました。

単に応募を募るだけでは採用をすることが難しく、1日で選考を終えその日に内定を出す1day選考会を実施する監査法人もあれば、頻繁に採用イベントを実施する監査法人もありましたし、1年を通じて積極採用であったことは間違いありません。

■2017年に起きた採用の変化

積極採用なんてわかってますよ的な声もあることと思いますので、もう少し細かい内容をお伝えします。

売り手市場が続いたことは間違いのない事実ですが、監査法人における採用にもちょっとした変化が見られました。文面に残すことのできる程度のものだけですが、以下にて3点挙げさせて頂きます。

【1】準大手・中堅監査法人での採用事例が増加

2016年と比較し、準大手及び中堅監査法人からの引き合いが多くなり、USCPA全科目合格者の採用事例が増加しました。海外会計事務所のメンバーファームとなっている一部の監査法人の話でまだ限定的ではありますが、大手監査法人だけでなく、準大手や中堅にも裾野が広がった、という印象がございます。

【2】アドバイザリー部門では会計・経理経験者を採用する傾向に

アドバイザリー部門の採用に関して、2015年~2016年は、会計関連業務の経験を持たないUSCPA全科目合格者や、USCPA学習中の高ポテンシャル人材の採用が数多く見られたものの、2017年は未経験人材の採用が減少し、全体としてUSCPAの合格ステータスよりも経理やコンサルティング等の関連業務経験を重視した採用にシフトし、少し敷居が上がりました。

【3】積極採用した法人とそんなでもなかった法人が入れ替る

監査法人全体で採用活況ですよ、という風潮はあるものの、大手監査法人がそれぞれ同じくらいの採用意欲をもって、USCPAの採用を行っているわけではありません。それぞれの監査法人(&それぞれの部門)で採用意欲も異なりますし、異なる採用基準を設けています。

実は2016年と2017年とで、採用が多かった監査法人は異なります。面談にお越し頂いた方には、「この法人、去年はたくさん採用しましたが、今年はだいぶ採用意欲が落ちてますね…」、「今年に入ってから、この法人はかなりホットになってますよ!」などと、個別に話をしてきましたが、積極採用を行う監査法人が入れ替わったことは、2017年の特徴の一つでもあります。

■2017年の監査法人に関連するニュース

そろそろ、2018年はどうなるの?、という話題に入っていきたいと思いますが、その前に、監査法人関連で個人的に気になったニュースを軽く取り上げてみたいと思います。

新日本有限責任監査法人については、AIが異常仕訳を自動的に識別するアルゴリズムを開発し、実用化に向けて動き出しているというニュースに加え、EY(イギリスかな?)が、製造業と小売業における監査の場でドローンの活用を試みているという記事も目に留まりました。

有限責任監査法人トーマツでは、監査業務の変革と働き方改革の促進を目指すために、「トーマツ監査イノベーション&デリバリーセンター」を12月に開所し、グループ全体の話になりますが、2018年10月竣工予定の丸の内のビルに、2019年春にグループ主要法人の拠点を集約するというニュースもありました。

PwCあらた有限責任監査法人に関しては、PwC Japanグループとして5月に発表されましたが、大手町に「働き方改革」を実現するオフィスなるものを開設しています。

有限責任 あずさ監査法人は、働き方改革に向けて、というニュースリリースが11月に発信されました。また、日経電子版での記事ですが、監査契約の新規受注を1年間停止する、という内容のニュースにはとても驚きましたね(出どころは日経のみっぽいので、真偽の程はわかりません)。

他にも準大手の太陽有限責任監査法人が、優成監査法人との合併(2018年7月が目処)に合意したとの発表もありましたし、監査法人のローテーション制を検討、という記事も記憶に新しいことと思います。

不正がらみのニュースも多かったのですが、ここでは触れないでおきます。また、ニュースのURLは貼り付けておりませんが、気になるニュースがありましたら、ググってみてください。

■2018年の監査法人におけるUSCPAの採用は?

2018年に向けて明るい話題で締めくくりたいのですが、この転職市場活況期はそう長くは続かず、後半から中途採用は縮小傾向になるのでは、と考えています。天気予報をするのであれば、午前から日中までは晴天が続き、夕方頃からはところどころで曇りだす、という感じでしょうかね。

東京オリンピックがある2020年からやばくなるよ、と巷では言われていたり、2018年には世界的なバブルが弾けるのでは、なんて懸念もありますが、経済アナリストでも景気減退がいつ起こるかについて確かな予測が難しいですからね、、、景気面は一先ず横に置いて、現在の経済状況が続くと仮定した上で、なぜそう考えるのかについて、以下にてお伝えしたいと思います。

【1】公認会計士試験合格者数が増加

公認会計士の論文式試験合格者数は、一昨年2015年に1,051人(もうややこしいので旧2次試験合格者等を含めます)だったのですが、2016年には1,101人で、この2017年は1,231人まで増加しております。

また、2018年の第I回短答式試験の申込者数も発表がありましたが、2年前と比較し1,300名以上増えています。第Ⅱ回もあり、既に短答式試験に合格し再度論文式試験にチャレンジする方もおりますので、1つの参考指標にしかなりませんが、公認会計士人気が復活していることは間違いありません。

公認会計士試験の合格率が2017年と同じであると仮定しても、2018年には1,300人を超えることは確実で、合格率を下げることは考えにくいため、1,400~1,500人くらいに落ち着くことと思います。

供給が増加すれば需要は減少する、という単純な理論ですが、この会計士試験合格者が増加しているという現象は、監査法人の中途採用に影響を及ぼすことと考えています。

【2】税理士試験科目合格者の増加と税理士志望者が増加する可能性

これは監査法人とは異なる話ですが、最新のトピックということもあり、この流れでちょっと付け加えておきます。

この12月15日に発表があった税理士試験でも奇妙な動きがあり、これも無視できません。全11科目ある中の、財務諸表論という科目ですが、昨年度試験では15.3%でしたが、本年度試験では29.6%という合格率で、2倍弱になっていますね。その影響もあって、一部科目合格者を含めると、昨年度と比較して1,000名程合格者が増加しています。

これには、税理士試験の受験希望者が減少の一途を辿る中、それに歯止めをかけようという意図的なものを感じてしまいます。もちろん、一部科目合格者が全て転職市場に出てくるわけでもなく、すぐに転職市場に強い影響を及ぼすものでもないと思われますが、財務諸表論の合格を機に、複数科目に合格した時点で転職しようという人材が、転職市場に数多く出てくる可能性も大いに考えられます。8月に税理士試験の受験を終え、自己採点次第で転職に動き出す方も出てくることと思われます。

USCPAの活躍の場は、公認会計士、税理士と全て一緒というわけではありませんが、ともに会計・財務・監査・税務というフィールドが主戦場であり、そこに税理士試験科目合格者という供給が増えることにより、会計業界における中途採用全体の需要縮小に拍車がかかってしまうという懸念は捨て置けません。

【3】IFRS(国際会計基準)対応の次はどうしようか問題

話を監査法人に戻しましょう。上記の【1】は主に監査部門への影響という意味合いが強いのですが、こちらは監査法人内のアドバイザリー部門に関する話となります。

少し前から業界内では懸念点として話題になっていますが、IFRS(国際会計基準)対応のアドバイザリーもいつかは終わります。その先にどのようなテーマでアドバイザリー業務を受注していこうか、各監査法人で模索を続けています。

IFRSは各企業が任意適用という形で進めていますので、強制力と期限のあったJ-SOXブームとは異なり、この時期が来たら終わる、というものではありません。そのIFRS適用企業は適用予定会社を含め158社(日本取引所グループHPより、2017年11月27日現在)にまで増加し、現在も水面下で進めている企業も多々あり、今後も適用企業は増加していく見込みですので、IFRS対応関連の仕事は2018年もまだ残ることと思いますが、明確な時期は分からないものの、いずれは縮小していくものと考えています。

監査法人のアドバイザリー分野においては、過去のJ-SOXや現在のIFRSなどのような大きなテーマが需要の源泉となります。IFRS対応の次に来るテーマもなくはないのですが、他のコンサルティング会社も手を伸ばしていける分野のもので、競合相手が多い分野になりますので、監査法人での大きな盛り上がりは期待しにくいかな、と考えています。

【4】2017年の各監査法人の動きから…

前述で2017年のニュースをざっくりと集めてみましたが、ここでそのニュースに関連した見解を述べさせて頂きます。

大きなテーマとなったのは「働き方改革」。オフィス移転、監査業務の変革(標準化)、AIの活用化などは、多かれ少なかれ、「働き方改革」に紐づいており、その推進に本腰を入れ動き始めました。厳格な残業規制がかかり、〇時間以上の残業をするためには理由とともに事前の申請が必要となったと、現場で働く方々から声もあがっております。

これまで監査現場でやってきた細々とした仕事(会計士でなくともできる仕事)を標準化して、会計士以外の人間に担当させる仕組み作りも進めていますが、このような「働き方改革」推進への取り組みによって、「監査現場の負担減」「監査法人からの人材流出が減少」という流れが考えられます。監査現場で仕事が減り、監査法人から流出が少なくなるのであれば、中途で人材を採用しようという意欲も低下していくことと考えています。

ただ、これらば2017年の後半になってから動き出したもので、AIもまだ試用段階ですし、標準化が難しい監査業務を変革するには時間を要することを考えると、2018年早々に影響が出てくるわけではありませんが、2018年中には監査法人の中途採用に少なからず影響を及ぼすことと考えています。

■最後に・・・

追い風が長く吹きすぎているな~という漠然とした不安と、希望的観測はしないよう心掛けているせいか、皆様に不安ばっかり煽った感がありますが、2020年まで増員を行う計画を持っている監査法人もありますし、監査法人全体として採用意欲が高い状況はもうしばらく継続するものと考えています。

ただ、監査法人の採用は既にピークは過ぎ現時点でも徐々に厳しくなっていると実感しております。これまでは深刻な人手不足(=供給不足)によって、積極採用を進めてきましたが、2018年は供給の増加、且つ劇的な需要の増加も見込まれないため、全体的に縮小傾向となり、監査法人ごと及び部門ごとに採用意欲の差は顕著に出てくることと予想しています。

もちろん、上述の不安要素が単なる杞憂で終われば良いのですが、仮に現実に起きた場合に備えて、監査法人への転職を考えているUSCPA学習中の皆様に伝えたいのは、USCPA試験にできるだけ早く合格し、なるべく早めに転職に踏み切ること(決して転職を煽るわけではありませんが、この業界における転職はタイミングが重要です)。

2018年は時間との勝負の年になることと思います。「オリンピックがある2020年以降はヤバい論」を「2020年までは大丈夫」と捉えてはいけません。悠長に勉強をしていては時期を逃す可能性があります。学習時に立てた目標より、3か月前倒しして合格しよう、くらいの考えで学習に臨んで頂ければと思います。

仮に難しい状況になったとしても、「USCPAの監査法人転職」のプロとしての腕の見せ所で、皆様の夢を叶えるべく一緒に道を切り開いていきたいと考えています。最後までお読み頂き、有難うございました!

少し早いですが、良い年末年始をお過ごしください!!!
May the year 2018 be an extra nice one to you!

≪USCPAキャリアナビ≫では・・

USCPA(米国公認会計士)試験合格者及び学習中の方の転職サポートを行っています。転職活動のサポートから長期的なキャリアプランのご相談まで承っておりますので、まずは気軽にご相談ください。

無料転職登録

Pick Up Topics

USCPAの監査法人転職事例と考察(2019年上半期 Ver.)
  • USCPA全科目合格
  • 会計アドバイザリー
  • 会計監査
  • 時事ニュース
  • 監査法人
   
   
USCPA(米国公認会計士)のライセンス(License)は取得するべきか?
  • USCPAライセンス
  • USCPA全科目合格
  • 転職情報
   
   
USCPAを取り巻く転職市場の変遷(その②:2009年~2012年)
  • 監査法人
  • 移転価格
  • 税理士法人
  • 転職情報
   
   
監査法人の金融監査部門でUSCPAの求人が多い理由
  • USCPA全科目合格
  • 会計監査
  • 監査法人
  • 転職情報
   
   
USCPA合格後の転職先(その①:プロフェッショナルファーム)
  • USCPA全科目合格
  • コンサルティング会社
  • 監査法人
  • 税理士法人
  • 転職情報
   
   
【USCPA合格体験記 Vol.2】JCPAからUSCPAに切り替え1年半で全科目合格(2018年6月合格)
  • USCPA全科目合格
  • USCPA勉強方法
  • USCPA試験
  • 合格体験記
   
   
一覧に戻る

eラーニング

新着記事

1
USCPAを取り巻く転職市場の変遷「その③:2013年~2017年」
2024/04/22
  • M&A
  • 監査法人
  • 移転価格
  • 税理士法人
  • 転職情報
   
   
2
USCPAを取り巻く転職市場の変遷(その②:2009年~2012年)
2024/04/22
  • 監査法人
  • 移転価格
  • 税理士法人
  • 転職情報
   
   
3
USCPAを取り巻く転職市場の変遷(その①:2005年~2008年)
2024/04/22
  • コンサルティング会社
  • 会計監査
  • 監査法人
  • 転職情報
   
   
4
移転価格コンサルティングに転職した事例のまとめ
2024/04/19
  • USCPA全科目合格
  • USCPA科目合格
  • 移転価格
  • 税理士法人
  • 転職ノウハウ
   
   
5
USCPA合格後の転職先(その①:プロフェッショナルファーム)
2024/04/16
  • USCPA全科目合格
  • コンサルティング会社
  • 監査法人
  • 税理士法人
  • 転職情報
   
   

コンサルタントに相談

1000人以上の転職を支援してきたUSCPA専門のコンサルタントが徹底支援します。

無料転職登録