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【USCPA合格体験記 Vol.7】2科目の失効でも諦めず挑戦し、契約切れギリギリで全科目合格(2020年9月合格)

2021年2月1日
  • USCPA全科目合格
  • USCPA勉強方法
  • USCPA試験
  • 合格体験記

2021年2月1日 / 最終更新日:2021年2月1日

今回の合格体験記は2020年9月のScore ReleaseでUSCPA(米国公認会計士)試験に全科目合格された方となります。USCPAの勉強を始めたのは、ネガティブな自分への挑戦という背景があり、勉強開始後も合格したFAR、BECが失効するなど、順調な道のりではありませんでした。予備校等の合格体験記ではあまり語られることのない生々しさや、各科目の勉強方法等、細かく綴って頂きましたので、是非皆さんにはご一読頂きたいと思います。

■自分自身のバックグラウンド

《勉強開始前(24歳)》
・キャリア:常用型技術派遣職員
・保有資格:英検1級、BATICアカウンタントレベル
・大学の専攻:経済学
・その他:大学時代、商業簿記と工業簿記のさわりだけ授業で勉強しました。

《2科目合格後(26歳)》
・キャリア:監査法人の事業会社向け監査部有期契約職員

《全科目合格後(28歳)》
・キャリア:上記監査法人の無期雇用職員

■USCPAを目指した理由

新卒の就職活動に失敗したからです。

私は大学時代、本当にぐうたらな学生でした。勉学に励むわけでも、バイトや意識の高い活動に打ち込むわけでもありませんでした。比較的ちゃんとやっていた部活も中途半端でした。こんなダメ人間である自分が就職活動をしてもどこも雇ってくれないだろうという気持ちでいたので、やる前から就活を諦めており、ESを10~20社くらいしか出しませんでした。8月くらいから就活を開始したため、どこの企業も採用をほぼ終えており、ことごとく落ちました。大学の卒業式1週間前に応募した技術系派遣会社の選考がたまたま通り、そこで就職活動を終えました。

就職後は、田舎の工場に送られ、データ分析の仕事をまかされました。バックグラウンドでも書いた通り、私は文系の学生で、技術など全く分からなくて、いつも上長に詰められていました。データ分析をできないならと、肉体労働もたくさんしていました。

そんな時に、父に、「キャリアを立て直しなさい」ということを言われました。前述の通り、私は当時完全に自信を無くしており、「私には望むキャリアなんか歩めないだろう」という暗い気持ちから父に最初反発していました。しかし、高校や大学の同級生が医者、官僚、商社マン、法曹、金融マンとして働いているのを見て、次第に自分もなんとかしてキャリアアップしなきゃいけないなと思うようになりました。

最初は資格なしで転職活動をしましたがことごとく書類落ちしました。これではいけないと思い、目に見える付加価値として、何か一つ大きな資格を取ろうと決心しました。私には英検1級レベルの英語力と、簿記の学習経験が少しだけあったので、この強みを生かせる資格がいいと思いました。調べたところ、どうやらUSCPAというものがあって日本の公認会計士より簡単に取れるらしいということがわかり、すぐに予備校に入りました。

■USCPA学習中の体験(受験スケジュール・苦労したこと)

《FAR、BEC合格まで:2017年6月~2018年3月》
まずはFARに専念しました。出願州はFAR関連科目のみで単位要件を満たせるアラスカにし、半年間勉強して1発合格しました。

次に、BECを勉強しました。経済学部出身なので、経済学やファイナンス理論はうっすらと記憶があり、すいすい進めることができました。3か月くらいで合格できました。

《転職活動:2018年3月~2018年9月》
2科目合格したところで、転職活動をはじめました。もともとキャリアチェンジをしたいという焦りがものすごくあり、科目合格する前からいろんなエージェントさんに話を聞いてもらっていました。どの人も「会計ファームに行きたいなら少なくとも2科目合格は欲しい」と言っていたので、条件を満たした時点で活動を開始しました。監査法人に3社応募し、そのうち1社から何とか2年間の契約職員として内定を頂き、入社いたしました。

《AUD、REGで躓く:2018年9月~2019年9月》
ここから先で、かなり時間がかかってしまいました。理由としては以下の4つです。

①初めて勉強する科目であったから
FAR、BECについては大学で多少勉強していたのでかなり頭に入りやすかったですが、あとの2科目(とくにAUD!)はとっつきにくく、慣れるまで時間がかかりました。

②仕事が忙しくなってしまったから
監査法人では上場ジョブにアサインされました。上場企業の監査は期末監査以外も四半期レビューなどで忙しく、平常時でも9時に仕事が終わるのが普通でした。前職よりもかなり仕事が忙しくなったため、勉強時間の確保が難しくなりました。

③監査法人にキャリアチェンジして安心してしまったから
もともとキャリアチェンジするためにはじめた勉強です。監査法人に入り、有期とはいえ少なくとも2年間は会計監査できるということから、合格しようという強い意志がなくなってしまいました。

④好きな人ができてしまったから
田舎の工場から都会に移住し、行きつけの店ができました。そこで知り合った女の子に片想いをし、その人のことで頭がいっぱいになり勉強ができなくなった時期がありました。(ちなみにその人への片想いは成就しませんでした。)受験者の皆様。勉強中の片想いは毒です。合格してから新しい縁があります。 

《FAR、BECの失効から全科目に合格:2019年9月~2020年9月》
この結果、FARとBEC合格から1年半が経ち、失効してしまいました。有期で監査法人に入ったため、あと1年で4科目全てに合格しなければならなくなりました。

財務諸表監査をしていたことから監査のイメージがつき、AUDにはサクッと合格しました。FARは基準改定のフォローに時間がかかり、半年くらい勉強して合格しました。BECは前回合格したこともあり、1か月の勉強で合格できました。ここで契約切れまであと3か月になりましたが、REGも3か月勉強して合格し、なんとか法人にとどまりました。

■勉強方法

計算科目はアウトプット中心の学習をしました。具体的には、予備校の問題集を5~7周しました。ポイントは、MCとTBSともに90%程度の完成度にすること、です。予備校はMC3周、TBS2周と言っていますが、それでは足りないです。MCは7周、TBSは5周しました。90%の完成度になるまで何度もやりましょう。理論科目は理解重視の学習をしました。特にAUDの内部統制プロセスの章や実証手続の章は理解できるまで何度も読み込みました。FARとBECについてはExpireを経験していますが、再受験の際は基準が改定されたところをフォローしつつ、満遍なく学習しました。以下、科目別に書きます。

①FAR
仕訳の理解が大事です。後述しますが、この資格を使う仕事は仕訳が最も大事です。試験でもそれが問われます。MCを見た瞬間仕訳が思い浮かぶまで演習しましょう。

【科目失効後の勉強法】
基準が改定された部分が多々あった(特にリース会計!)ので、そこのフォローを最初にしました。改定されてない部分は問題演習すればすぐに思い出せました。

②BEC
【管理会計、ファイナンス、経済学】
問題を見た瞬間計算式が浮かぶようにしましょう。

【IT・内部統制】
深入りしすぎないことが大事です。問題集で扱われているものだけ解けるようにしましょう。

【WC】
英作文は書いて人に見てもらうことでしか上達しないです。「Grammaly」という添削アプリがあります。ネイティブに添削してもらえる環境にいない方は、このアプリで自分の英文をチェックしましょう。

【科目失効後の勉強法】
ERMが改定されたので、そこをフォローしました。改定されていない部分は問題演習すればすぐに思い出せました。

③AUD
各手続きが監査の流れの中のどこに含まれているのかを意識しましょう。(例:「確認状は実証手続の詳細テストで使う手続きである」等。)また、あるべき業務プロセスを空で人に説明できるくらいテキストを読み込みましょう。Reportingはスマホに自分の朗読音声を吹き込み、繰り返し聞きました。監査業務以外の部分は各業務がどのように違うのかを意識して学習しました。各業務が具体的にどこで使われているのかイメージすると学習しやすくなると思います。(例:レビュー→上場企業の四半期レビュー AUP:M&Aの財務DD)

AUDを受験時代に頑張っておくと監査法人に入った後仕事がやりやすくなります。将来の自分のためにもこの科目は頑張りましょう。

④REG
【税法】
Basisの計算方法が各組織体ごとでどのように違うのか意識しましょう。また、財務会計との違いを意識しましょう。暗記事項は暗記しましょう。

【ビジネス法】
学習する範囲は多いですが、会計士の倫理責任など我々の業務に関わる部分が頻出なので、そこを重点的にやりました。

■監査法人に入ったUSCPAがすべきこと

①仕事に粘り強く取り組む癖を身に着ける
これが一番大事だと思っています。仕事しながら勉強していると、どうしても仕事よりも勉強を優先させる時期が出てくると思います。私も最後の1年はそうでした。だからこそ、受かった後は仕事で成果をだすことに注力すべきだと思います。成果に注意を向けることで、資格試験では得られない実務遂行能力が身につきます。

②仕訳力の補強
①があった上で、次に大事なのは仕訳力です。具体的には、
1.取引が発生したときの仕訳を考える力
2.仕訳を見たときにどのような取引があったか読み取る力
3.勘定科目の反対側にどんな科目が来るべきか考える力
4.将来どんな仕訳が切られるか考える力

資産除去債務を例に考えてみましょう。
有形固定資産を取得した際、(法律によって義務付けられている場合)その資産を除去する時の原状回復費、撤去費は、現在価値に直して取得原価に含めなければなりません。

つまり取得時は、
Dr.)PP&E XX
  Cr.)Cash XX
     ARO XX
という仕訳が切られるはずです。

この仕訳を取引から考える力が1です。逆に、この仕訳を見たときに「この企業は資産の撤去時に履行しなければならない義務があるらしい!」と考える力が2です。AROの反対側にPP&Eが来ることを考えられる力が3です。
4を考える前に、上記の設例の時間を進めてみましょう。

一旦計上した資産除去債務は、当該資産を除去するときに割り戻した価額で消します。その際に取得時見積もった費用と実際に払った金額の差異は履行差額として計上されます。つまり資産の除去時は、
Dr.)Accumulated Depreciation XX
  ARO               XX
  Loss on settlement of ARO(貸借差額)
  Cr.)PP&E              XX
     Cash               XX
という仕訳が切られるはずです。

ARO計上時に除去時の仕訳を考えられる力が4です。
これらの力は、期末監査や四半期レビューでやる財務分析や仕訳テストをする際必ず役に立ちます。監査人は「期中こんなことが起きたから、これくらい数値が動くだろうな」という見立てを立てながら帳簿を見ます。その際に役立つのがこの仕訳力なのです。

鍛える方法ですが、簿記の勉強をお勧めします。日商簿記や、税理士の簿記論がいいと思います。JCPAの財務会計論もいいとは思いますが、科目合格だと資格として残らないので、日商簿記か税理士の簿記論をお勧めします。

■これからUSCPAを目指す皆様へ!!!

この資格で関連経験なしでキャリアチェンジをしたいなら、若いうち(できるなら20代半ば、遅くとも29歳まで)に受かることが重要です。「この資格で人生が変わった」という人は私を含め多いですが、それは若いうちに受かり、市場を見極めて適切な転職活動を行ったからです。そのためには①効率的な勉強の仕方を確立すること②勉強中の段階から転職の情報収集をすることの2点が大事です。どっちが欠けてもいけません。両方大事です。①は予備校の人と相談しましょう。②はSACTさんなど、信頼できる転職エージェントと連絡をとりましょう。

また、監査法人の会計監査部は、会計事務所やコンサルファームと異なり、難関資格に合格している人しかとりません。全員優秀です。彼らと肩を並べるには監査法人に入った後も自己研鑽が必要です。現に私も仕訳力の補強のため税理士簿記論の勉強をしています。USCPAに受かった後も会計の旅が続くことを念頭において、楽しみながら勉強できるのが理想だと思います。

皆様がこの資格に合格し、描いたキャリアを実現することを心より願っております。

■編集者より

まず、合格体験記を寄稿頂いたことに深謝申し上げます。
この体験記を読ませて頂いて、なかなかこれは胸にこみ上げるものがありました。

最初にコンタクトを頂いたのは2017年9月、まだ勉強を始めて3か月くらいの頃でしたね。
まだ1科目も合格しておらず、異なる分野での経験に加えて、純粋が故に不器用なタイプでもあったため、このまますぐに活動をしても上手くいかないと考え、私も「会計ファームに行きたいなら少なくとも2科目合格は欲しい」と伝えたことと思います(当時は2科目合格くらいからBig4への門戸が開かれていました)。

それからは科目合格をしたタイミングなど、何度か電話やメール(振り返ったらめちゃめちゃメールしてましたね、笑)でやり取りを行い、2018年4月には私が地方へ出張に行った時にお会いしましたが、元々ホテルのラウンジで話をするつもりが、イタリア料理屋でよくわからないヨーガ・スッコという飲み物を飲みながら、1,2時間話をしたのを覚えています。(あの時、「とりあえずナンパしてみましょう!」なんてわけのわからないことを言った記憶があります…)

業務理解や視野を広げるために、私が開催した採用セミナーにもわざわざ地方から出向いて頂きましたね。また、面接でもしっかりと話ができるよう、私の方でもあれこれと頭をひねりながら対応をさせて頂きました。結果として私のサポートでは上手くいかなかったのですが、後日、本人から(他経由で)内定もらえました、という報告を頂けた時は、ほんとに嬉しかったです。

入社してからは、何か個別にやり取りをするというよりも、USCPA懇親会に参加頂くなど接点を持ち続け、全科目合格に向けて応援していましたが、まさかの2科目失効。もう無理そうかな、なんて勝手に思っていましたが、そこから巻き返しての全科目合格、しかも有期契約の期限間近での合格は本当に素晴らしいことと思いますし、大きな自信にもなったはずです。

仕事としてはまだ一人前とは言えないものの、人生が上向いていることは間違いなく、ぐうたらで後ろ向きな自分からは脱却していることと思います。これから仕事でもプライベートでも良いご縁がありますよう、心から願っております(まずは彼女ができますように)。

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