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USCPAを取り巻く転職市場の変遷(その①:2005年~2008年)

2024年4月22日
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2017年5月25日 / 最終更新日:2024年4月22日

この10年間で、日本における転職市場全体としても大きな変化がございましたが、会計業界、特にUSCPA(米国公認会計士)を取り巻く転職市場について、時代別に3部に分けて、その背景となる出来事とともに詳しく解説していきたいと思います。まずは、「その①:2005年~2008年」から投稿していきます。

■USCPAの採用隆盛期(2005年~2008年)

それまで限られていたUSCPAの活躍の場が、この時期を境に爆発的に広がりを見せることとなり、多くのUSCPA合格者が監査法人やコンサルティング会社等に採用されました。同時にUSCPA資格そのものの認知度が高くなり、学習を開始する方が増加した時期でもありました。

■きっかけは「J-SOX法」の成立

その採用のきっかけは、2006年6月に金融商品取引法が国会で成立し、上場企業(及び財務報告に係る内部統制の評価範囲に入る連結子会社)を対象に内部統制報告書の提出が義務化されたこととなります(俗にいう「J-SOX法」「日本版SOX法」の成立)。

もともとは、エンロン事件やワールドコム事件といった巨額の粉飾・不正監査事件が多発したことに起因して、米国で成立したサーベンス・オクスリー法(SOX法)に倣って整備された法規制で、細かい中身に多少の違いはあるものの、フレームワークは米国と同等(基準としては米国の方が格段に厳しい)のものでした。

また、その「J-SOX法」は、2008年4月1日以後に開始する事業年度から適用されることとなりました。加えて、内部統制のプロセスの見直しや膨大な文書化作業を強いられる中、各企業は限られた時間内で急ピッチで内部統制の構築及び再構築をしなければならない状況でもありました。

■内部統制コンサルティング会社の台頭

企業内でも「内部統制推進室」「内部統制プロジェクトチーム」なるものを社内で立ち上げ、社内から内部統制に関して見識がある人材を集めるともに、社外からも人材採用を行い始めましたが、その採用の対象の一つとなったのが、USCPA合格者や学習中の人材でした。

一方で、会計専門のコンサルティング会社やITコンサルティング会社では、外部から企業の内部統制の構築支援を行うべく、内部統制コンサルティング部門を立ち上げる他、米国SOX法対応経験のある方や公認会計士などが立ち上げた、中小規模の内部統制コンサルティング会社も世に出始め、USCPAに関わる人材を積極的に採用しておりました。

残念ながら、現在は存在していない会社や、ブーム終息後に部門の閉鎖を余儀なくされた会社も数多くございましたが、「J-SOXブーム」「内部統制ブーム」に乗るような形で、USCPAが広く知られることとなりました。

■監査法人の大量採用時代が始まる

2006年に日本の公認会計士試験が新制度に移行した結果、2005年は1,300名であった合格者が、2006年は3,000名強、2007年は4,000名強と合格者が一気に増加し、各監査法人も定期採用で大量に試験合格者の採用を行っていた時期でもありました。

その背景があるのにも関わらず、USCPA合格者の中途採用も積極的に動き始めたのもこの時期となります。

では、なぜそれほどまでに採用を行っていたのか?

それは、四半期レビューと内部統制監査の実施が決まっていたタイミングでもあり、特に内部統制監査においては、従来の財務諸表監査に加えて実施する必要があり、単純計算で従来の2倍の業務量をこなす必要があったことが第一の理由です。

また、当時はIPO(新規上場)企業の増加に伴い、上場準備監査の需要も拡大傾向にあったこと、内部統制構築支援など各種アドバイザリーでも仕事の受注が増加していることも要因となり、今後ますます人手不足になることを予期し、早めに人材を獲得しないとまずいことになる、という風潮が監査法人内で強まっていました。

■金融監査部門を中心にUSCPAを積極的に採用

積極採用をしている監査法人でも、特に採用ニーズが高かったのが、大手Big4監査法人の金融監査部門でした。一定の英語力を備えたUSCPA合格者であれば、ほぼ経験不問で採用しており、一部の監査法人においては、学歴等での縛りを設けながらも複数の科目合格者の採用(全科目合格までは契約社員)も行っていました。

金融監査部門は現在でも変わらず求人が出ており、採用ニーズの高い部門ではありますが、当時から日本の大手金融グループは軒並み米国ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しており、USGAAPでの監査が必要であることに加え、外資系金融機関においては監査先の担当が外国人であったり、システムや資料が全て英語のものであったりなど、仕事をする上で英語力が必要とされることが、USCPAを採用していた(している)大きな理由となります。

USCPA合格者が数多く採用されましたが、感覚値にはなりますが、監査法人に入社した方の8割ほどが金融監査部門であったことと記憶しております(その他は、一般事業会社向け監査部門、会計・リスクマネジメント系アドバイザリー部門、システム監査部門 など)。

■USCPA受験者及び学習者の増加

少しポイントがずれますが、USCPA試験制度の変更によってUSCPA受験の敷居が下がったのもこの時期でした。

2004年に、年2回の試験実施、且つ4科目全てを同時に受験しなければならなかったペーパー試験からコンピューター試験に変わり、現試験制度(CBT3)に原型となる試験制度(CBT)となりました。まだ日本での受験はできなかったものの、科目毎の合格が認められ、受験日も固定されることなく、1科目につき年4回を上限に、ある程度自由に受験日を定めること可能になりました。

受験への敷居が下がったことにより、また、「J-SOX法」の成立に伴いUSCPA(米国公認会計士)の認知度が高まったことも重なり、受験者及び学習を始める方が増加し、それまでマイノリティで一部の人にしか知られていなかったUSCPA資格が、日本において大きく飛躍したのが、この2005年~2008年の時代でした。

その後、皆さんもご存知かもしれませんが、2009年~2012年は需要と供給のバランスが逆転し、長い冬の時代を迎えることになります。その背景は俗にいうリーマンショックだけに限りません。

続きは、後日投稿させて頂く「USCPAを取り巻く転職市場の変遷(その②:2009年~2012年)」で詳しく解説させて頂きます。

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