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【働くシリーズ Vol.1】大手監査法人(事業会社監査)で働くUSCPAの声

2017年8月29日
  • 会計監査
  • 働くシリーズ(転職後の生の声)
  • 監査法人

転職後の生の声を伝えるべく、働くシリーズという連載を始めました!
その第一弾(Vol.1)として、「大手監査法人(事業会社監査)で働くUSCPAの声」をお届けします。

■はじめに

ここに記載される内容は、ある大手監査法人の事業会社向け監査部門に所属する経験者の記述となります。監査法人といっても法人、または部署(金融監査部門や会計アドバイザリー部門)によって仕事の進め方、社内風土、キャリア形成や機会は大きく異なります。あくまでもご参考としてとらえて頂ければ幸いです。

■監査業務とUSCPA

2015年に、ご縁あって大手監査法人に入所しました。現在は事業会社向けの監査部門にて、会社法、金商法、外資系企業の監査に携わっています。それまでは事業会社で経理をしながら、監査法人への就職の機会をうかがっておりました。私がUSCPA(米国公認会計士)に合格した2011年はちょうど監査法人にとって苦難の時代であり、日本の公認会計士(以下、JCPA)の試験合格者でさえも就職するのが難しいと言われた時代でした。

本当は合格してすぐに監査経験が積みたかったのですが、方向転換を余儀なくされた形でした。しばらくの事業会社での「修業期間」を終えて、晴れて念願の監査法人に入所できたことは、何物にも代えがたい喜びでした。また結果的に、監査を受ける側である経理部での経験を積めたことは今思えばプラスになったと思っています。

監査は通常、監査チーム単位で往査から意見表明までを行います。クライアントの規模によりますが、大きなところだと100名規模のチームになることもあります。またその国内外子会社の監査チーム、親会社の監査チーム、IT監査部門、IPO部門、税理士法人等、他のチームと連携を組んで監査を進めていくことも多くあります。法人にもよりますが、私の所属している監査法人はフラットな環境で、所有する資格に拠らず同等の機会を与えてもらえます。ただ、それは裏を返せば同等の成果を求められるということではあります。

USCPAだからリファードワーク(外資系企業の監査)を中心にアサインされる、ということはほとんどなく、非常にドメスティックな会社の監査にも入っていくこともあります。会社法監査であっても金商法監査であっても、もちろんUSCPAの試験勉強では登場しない論点が多いのですが、それらも「知ってて当たり前」という雰囲気です。

そのため、JCPAよりも知識が不足していると感じることもしばしばであり、日本の税法や会社法を1から勉強しキャッチアップするという覚悟が求められます。自分の場合は、曲がりなりにもJCPAの試験勉強をしていた時代があり、その頃のベーシックな知識は非常に助かっています。個人的な感覚ですと、監査の現場ではUSCPAで勉強した内容よりもJCPAの知識を援用する機会の方が多いと感じています。もしも監査法人の監査部門への転職をお考えであれば、入社前に簿記の勉強をしておくことをお勧めします。

■監査法人はこんな人が向いている

監査法人で働くUSCPAの方は多くの場合、事業会社での経験を積んだうえで「中途採用者」として入所されます。そのため一定の社会人としての経験を酸いも甘いも積んできておりまたバックグラウンドも様々な方がおられるので、ダイバーシティを直に感じることができます。100人USCPAがいれば100様に違うという印象です。

対してJCPAの合格者は一般的に、大学を卒業してからストレートで入所される方が多く、入所後はじめて社会人をスタートするというパターンが通常です。そのため、法人全体はなべて若く自分よりも一回りも若い人が上司であることも珍しくありません。年齢がキャリア形成上不利になることはほとんどありませんが、Big4といえど日本の社内風土を引き継いでおり、若さが好まれる点は否めませんし、非常にドメスティックだなあと感じることもまだまだ多くあります。入所をお考えの方は、できるだけ早期の入所をお勧めいたします。

また、監査の仕事の多くは、クライアントとのコミュニケーションで構成されます。すなわちクライアントの現場担当者とコンタクトをとり、資料の依頼をしたり、インタビューを行ったりします。どの仕事にも言えることですが、高いコミュニケーション能力が求められます。この点、人と話すことが好きな方、営業職出身の方は有利ではないかと思います。もちろん独立性の観点から一定の距離を置く必要はありますが、クライアントの方々に頼りにしていただけることは喜びでもあります。真摯に謙虚に、お互いの信頼を築いていくことが重要だと考えます。

■監査法人でのUSCPAと英語力

監査法人によりますが、USCPAに期待されることはまず何を持っても英語力です。英語を駆使してドキュメンテーションやコミュニケーションを行える人材であれば、どの監査法人でも非常に重宝されます。監査法人では、まだまだスタッフの英語力の点ではUSCPAの方々にアドバンテージがありますので、この部分をアピールできれば仕事の幅も広がりますし、ダイバーシティを肌で感じながら仕事ができるでしょう(私の所属部門ではありませんが、話を聞く限りでは特に金融部においてその傾向が強いと感じています)。

ただ、JCPAの方々の英語力も決して低くはありませんし、帰国子女や海外在住経験者の方も当たり前に法人におられるので、英語力がアドバンテージであることは遅かれ早かれ薄まっていくのではないかと考えています。またマネージャー以上の職階になると英語ができて当たり前と見られるようです。なので、自分の英語力だけに甘んじてしまうのは危険だと思っています。

英語は業務のアサイン機会を増やせるツールとして使用し、「USCPA+α」の何かを武器として磨いていく必要があるのではないでしょうか。それはご自身の今後のキャリアを見据えた資格、英語以外の外国語、ITスキルetc人によって違うと思いますが、入所後もこうした学びの姿勢を忘れないようにしたいものです。

■ひとりひとりが「個人事業主」 

事業会社と会計事務所との大きな違いではありますが、事業会社の従業員は会社法上の言い方ですと「使用人」ですが、会計事務所はひとりひとりが「個人事業主」というスタンスです。ですので、お互いにあまり興味がなかったりします。人材のターンオーバーが高いことも前提としてあるため、誰かが法人を「卒業」したとしても、去る者追わずです。

アサインされたチームはチームワークですので、お互いに助け合って監査を進めていきますが、共同プロジェクトでないかぎり別のチームと絡むことはほぼありません。スケジュールも比較的柔軟であり、自分の任意の時期に休みを取ることもできますし、年次が上がれば仕事のペース配分でさえ、自由に設計できます。

多くの人は往査等で事務所にいないことが多いので、誰が事務所に来ていない、とか、来ている等を気にする人もいません。こうしたことはすべてフリーハンドで可能ではありますが、裏を返せば何事も自己責任ですので、効率的な作業スケジュールを自分でオーガナイズするスキルが求められるでしょう。

■法人に入ってなにをしたいかを明確に 

転職活動をしている間は、監査法人に入ることがゴールになってしまいがちです。しかし、明確なキャリアビジョンを持っていると入所後の自分の向かうべき方向を決めやすく、高いモチベーションを維持できます。また監査法人は監査のみならず、アドバイザリー、税務、コンサルティング等幅広いサービスラインを持っており、いわば最高峰の「ビジネスの学校」と言えます。

日々の業務を地道にこなすことでそれなりの経験を積むこともできますが、意識すれば優れたリソースを大いに活用し、自分の目指すキャリア・ゴールに肉付けしていくことも可能です。法人にとどまってある程度の職階を目指すことも可能ですし、一定の経験を積んだ後は法人を「卒業」し、ここでの経験を生かした次のステップへ移ることも可能です。それは、特段アカウンティングに限定する必要もないと思います。USCPAを持ち監査法人での経験を積んでいれば、ビジネスについては一通りの知識はついているはずです。この部分は次の転職では非常に強いアピールになるし、チャレンジできるフィールドも大幅に広がると思います。

余談ですが、知り合いのUSCPAのアメリカ人に某大手航空会社のキャプテンの人がいます。彼はパイロットをしながらUSCPAを取り、現在は本業のパイロットと並行して副業として個人の会計事務所を持っています。主にtax return代行を行っているようですが、顧客ターゲットはairline系従業員(パイロット、キャビンアンテンダント etc.)です。エアライン現場を知り尽くしている彼だからこそ、顧客有利のアドバイザリーが行えるわけです。私はこの友人の話を聞いて非常に驚いたのを覚えています。USCPAの活かし方はもっと幅広くて無限にあるんだ、と感心したものでした。

■一番重要なことは「人間性」

自分の所属する法人ではJCPAとUSCPAとの差異はほとんどなく、英語のエンゲージメントでもドメスティックなエンゲージメントでも関係なくアサインされます(もちろん、本人のアサイン希望の反映はしてもらえます)。英語力や資格に関係なく評価のいい人はどんどん昇進しますし、高次の経験を積むチャンスも増えます。私の周囲でも、USCPAの方で飛び級昇進している人は何人もおられます。そういう方々を観察して共通することは、もちろんご本人の専門知識や英語力は秀でたものであることは間違いないのですが、やはり一番重要なことはご本人の人柄ではないでしょうか。

チームを率いる現場監督者(インチャージといいます)として、上司からも部下からも信頼されクライアントからも好かれている方であれば、誰からも大切にされます。上司も人間ですので、好意的に感じてもらえれば昇進も早くなり、アサインチャンスも増えることでしょう。これは監査法人に限らずどこの会社でも同じ当たり前のことですが、どの世界にいっても最重要なことは「人間性」なのではないでしょうか。真摯に謙虚に前向きに、感謝の気持ちを抱きながら仕事をすることで、自分も周囲もHAPPYに仕事ができるのではと考えます。

■編集者より

編集者より、という項目ながらも、こちらの記事は、自由形式で本人が感じるまま、考えるままに作成頂いたレポートで、誤字脱字以外の編集は一切入れておりません。

冒頭部分でも触れましたが、ある大手監査法人の事業会社向け監査部門に所属する方から頂いたレポートで、法人や部署によって仕事の進め方、社内風土、キャリア形成などは大きく異なりますので、全ての法人や部署に該当する話でございません。あくまでも参考としてとらえて頂ければと思います。

最後に、監査業務でお忙しい中ではありながらも、当記事の作成に快くご協力頂けましたこと、心より感謝申し上げます。

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