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アジアの会計事務所における日本人の役割と仕事内容

2024年7月15日
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2017年7月24日 / 最終更新日:2024年7月15日

アジアの会計事務所と言っても、Big4の海外事務所のような大規模な会計事務所から、日本人の会計士が運営している現地の中小規模会計事務所や、会計・税務を軸足に置きながらも、設立支援から法務・労務、撤退支援まで、広範なコンサルティングを行っているところまで多岐に渡ります。

USCPA(米国公認会計士)を目指す方の中には、いつかは海外の会計事務所で働きたい、という方もいらっしゃいますが、海外アジア会計事務所での仕事内容や雇用形態、待遇面等を詳しくお伝えすると、抱いていたイメージとのギャップを感じられる方も数多くいらっしゃいます。

雇用形態や待遇面、地域性など、お伝えしたい観点は色々とございますが、今回のTopicsでは、「アジアの会計事務所における日本人の役割と仕事内容」と題して、「アジアの会計事務所」と「日本人の役割と仕事内容」にフォーカスし、お伝えしていきたいと思います。

■Big4海外アジア事務所での日本人の役割と仕事内容

USCPA全科目合格後に海外アジアのBig4事務所に転職された方もいらっしゃいますが、その多くは「Japan Desk」「Japan Practice」「日系サービス部門」と呼ばれるところ。

どんな仕事をしているところかざっくりとお伝えしますと、現地に進出している日系企業と事務所内の現地人の専門家スタッフを繋ぐ役割を担い、仕事の受注からそのコーディネート、納期期日や品質の管理、成果物の精査とその成果物に基づき顧客への説明、もちろん既存顧客の管理や新規顧客の開拓営業も重要な仕事となります。

担当顧客数は地域によって異なるようですが数十社~100社くらいで、それら既存顧客の対応をしつつも、新規顧客営業のノルマのある事務所もありますし、売上を上げることができれば、それが昇進昇格に大きく影響するような世界です。

もちろん営業といってもテレアポや飛び込みなどを行うわけではなく、現地で日系企業が問題視しているようなホットなテーマを題材にしたセミナーを開いたり、既存のクライアント、銀行などの金融機関やJETROとのコネクションを築いて紹介を促したりなどの地道な活動がメインとなります。

米国や欧州などであれば、監査や税務の実務を行う部門に入るケースも多いのですが、アジアの場合は実務部門に入ることはほとんどなく、良い言い方をすれば現地に進出している日系企業の経営の相談役や指南役、悪い言い方をすればコンサルティング営業やコーディネーター、という立ち位置での仕事になることと思います。

■日本人が現地で経営している中小規模会計事務所での日本人の役割

日本人が海外アジアで経営している中小規模の事務所やコンサルティング会社も各地に点在していますが、その成り立ちは二つのパターンに大別できます。

Big4海外事務所経験者が、そのまま現地で会計事務所やコンサルティング会社を設立したという流れが一つ目で、もう一つは日本の中堅クラスの会計事務所及びコンサルティング会社が、海外拠点を設立したという経緯となります。歴史としては前者の方が古く、後者はここ7~8年程の間に増加してきたという印象です。

これら中小規模の会計事務所での日本人の役割は、上述のBig4とほぼ変わらず、実務部隊には属すことはほとんどなく、現地に進出している日系企業の窓口としての活動がメインとなります。

Big4の場合は、監査、税務、リスクマネジメント、移転価格など、ある程度専門領域が分かれているのに対して、中小規模の場合は細かく分かれておらず、それらに加えて、会社設立、記帳代行、税務、法務、労務、人事、撤退等、会社経営に関して網羅的なサポートを行っているケースが多く、広い守備範囲の中で仕事をしていくことになります。

また、顧客の規模もBig4と比較して若干小さくなり、ローカルの税制や法規に関わる依頼が多く、国を跨いだクロスボーダーの仕事は少なくなります。

また、中小規模の事務所の場合は、日本人が少数で会社の運営を行っていることもあり、日本人が現地で採用された場合、その拠点のNo.2、No.3的な立ち位置となることを期待されることも多いです。つまり、単にスタッフとしての活躍を期待されているだけでなく、早い段階でマネジメントも担う人材として、事務所及び会社の事業拡大にも寄与してくれることを望んだ採用になりがちです。

■会計・税務・監査の専門性を磨きたいのであれば海外アジアより日本がベター

ここまで来るとこの記事で何を言いたいのかイメージできている方も多いと思います。

海外アジアの会計事務所やコンサルティング会社では実務に入ることは少なく、コーディネーター、営業、現地拠点のマネジメントという側面が強い仕事になります。

また、現地に進出している日系企業から会計や税務に関わる相談を受けることもありますが、それはローカルの法律や規制に関連した問題になることがほとんどとなりますので、「会計や税務、監査の専門性を磨きたい」という希望を持たれている方には、海外アジアの会計事務所やコンサルティング会社での勤務は向いていないことと考えています。

「会計や税務の専門性を磨きたい」というのであれば、日本の監査法人や税理士法人、会計事務所でしっかりと経験を積み、海外アジアでの勤務を考えるのであれば、別の視点を持った上でチャレンジして頂きたいと思います。

■まとめ

今回の記事は、Big4を含めアジア現地の会計事務所やコンサルティング会社で働いている方々から、直接伺った話をベースに作成させて頂きました。

アジア現地の求人を目にする機会も多いのですが、Big4は公認会計士やUSCPAなどの資格と経験の双方とも求められることが多い一方で、中小規模の事務所においては、資格は必須としていることが多いのですが、会計・税務の深い経験はあまり求められない傾向がある(もちろんその素養があった方がベターです)のは、そもそも現地で実務を行うわけでないからです。
※シンガポールに関しては、就労ビザ取得条件の観点もあって、実務経験も求められることが多いです。

最後に、「アジア現地の仕事は専門性が身に着かないから行っても意味がない」ということを、今回の記事で言いたい訳ではありません。実務経験を積めるという誤った認識を持って行ってしまうことで生じる、希望と現実のギャップを失くしたいという思いがあって記事を作成しています。

上記の最後に「別の視点を持って」と記載させて頂きましたが、専門性を磨くという観点であれば、その地域(ベトナムだったらベトナムの税制や法律、商習慣やビジネスの進め方)の専門性を磨くことはできますし、会計や税務だけでなく顧客の企業経営そのものに広く関わりたい、早期からマネジメントに関わり拠点長も任されたい、アジア現地で旗揚げしたい、異なる文化や商習慣の中で培った経験を自身の強みにしたい、実力勝負の海外で自分の腕一本でどこまで行けるかチャレンジしたい、、、

そのような思いを持っている方がいらっしゃいましたら、海外アジアという舞台に飛び出す選択肢も、一度考えてみても良いのでは、と思っています。

末筆ではございますが、これまで数十人の方のアジア転職を支援してきた実績があり、アジアの会計事務所、コンサルティング会社の転職市場には一定の見識を持ってはおりますが、弊社SACTではアジア勤務の求人は現在積極的に扱っておりませんこと、恐れ入りますがご理解頂けますと幸いです(ご相談がございましたらお受けしますので、お気兼ねなくご連絡ください)。

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