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移転価格アドバイザリー/コンサルティングでUSCPAが評価される理由

2024年10月28日
  • 移転価格
  • 税理士法人
  • 転職情報

2017年8月17日 / 最終更新日:2024年10月28日

税理士法人の移転価格アドバイザリー/コンサルティングへの転職支援を本格的に行い始めてから約15年。当初は移転価格の意味すら分からない状態でしたが、現在も師と仰ぐ元Big4税理士法人のマネージャー、シニアスタッフに移転価格のイロハから移転価格アドバイザリーの業務内容について教授頂き、書籍やニュース等で情報を集めて勉強した記憶を懐かしく振り返りながら、書き綴っています。

以後、USCPA(米国公認会計士)学習中の皆様の前に立って、「移転価格アドバイザリーの仕事内容について」をテーマにセミナーを開いたり、各Big4税理士法人の移転価格アドバイザリー部門のパートナーやマネージャーの方々をお呼びして採用説明会を開いたりなど、この分野がUSCPAの一つの選択肢として確固たるものになった、その歴史の礎を築けたことと手前味噌ながら考えています。

前置きが長くなりましたが、当Topicでは「移転価格アドバイザリー/コンサルティングでUSCPAが求められる理由」をテーマに、ざっくばらんに解説していきたいと思います。

■移転価格アドバイザリー/コンサルティングについて

移転価格アドバイザリー部門は、大手税理士法人の国際税務部門に所属していることが多く、「東京」「名古屋」「大阪」の3つの拠点(加えて沖縄にて拠点を有する法人もあり)を合わせて、各法人とも100~150名程の陣容を有し、大手税理士法人の総職員数が600~900名程度である中、かなり大きな部門であり、今や各税理士法人にとって大きな収益源となっています。

移転価格アドバイザリーの仕事としては、移転価格リスク分析、グローバル移転価格ポリシーの立案・策定支援、移転価格文書作成支援(BEPS対応含む)、事前確認(APA)の取得支援、政府間協議(相互協議)の合意・解決支援、移転価格調査対応など、列挙しただけでは分かりにくいものばかりですが、税理士法人における移転価格アドバイザリーは、移転価格税制に係る追徴課税のリスクを低減すること、国税庁による移転価格調査の際に正当性を主張するための材料を準備しておくことなど、課税前のリスクマネジメントの側面が強い仕事となります。

課税後の政府間協議(相互協議)の支援なども行っていますが、異議申立や国税不服審判所に対する審査請求、その後の税務訴訟に発展する場合は、法律事務所、弁護士法人がその支援を担うことが多いです。

■税理士資格保持者が少ない部門(資格で言えばUSCPAがマジョリティ)

大手税理士法人の国内税務、移転価格以外の国際税務の中途採用では、ほぼ日本国の税理士(複数の科目合格含む)、若しくは税理士登録が可能な公認会計士有資格者(一部の部門では論文式合格者も可)が必須となります。一部例外として米国税務サービスを行うチーム、M&A税務(トランザクションタックス)等での採用事例はありますが、日本の税制について学ばない、且つ税理士としての独占業務ができないUSCPAが採用された事例は、残念ながらほとんどございません。

ただ、移転価格アドバイザリーにおいては、税理士の独占業務ではないコンサルティング業務となりますため、移転価格の税務調査の立ち合い等を除き、税理士有資格者でないとできない仕事ではありません。

国際税務部門や関税チームのメンバーと協働で動くこともありますし、日本の税制に関する相談をクライアントから受けることもありますため、日本の税制に関する知識を持っているという意味では税理士に優位性はあるものの、英語力を備えた税理士はそもそも数が少なく、移転価格分野はこれまで税理士試験に向けて勉強した内容を活かしにくい、且つ将来的に独立を見据えた場合に移転価格に特化してしまうと独立開業しにくい、という事由もあって、移転価格をやりたいという税理士は少ないのが現状です。

実際に大手税理士法人の移転価格アドバイザリー部門では、税理士よりもUSCPA(学習中、一部科目合格の方を含む)の割合の方が高くなっており、パートナーの中にもUSCPAのシングルホルダーの方が数多く存在しています。

■会計・法規制・経済学等を広く学んでいること

そろそろ本題の理由の方に踏み込んでいきましょう。

移転価格アドバイザリーという仕事は上述のとおりコンサルティング業務の仕事で、税務代理という独占業務でもなければ、会計のみを深堀する仕事でもありません。

財務諸表(PL、BS、CF)の理解、それらを読み込むための財務指標(EBIT、ROAなど)や、管理会計に関する理解は業務上必要になります。また、クライアントの事業分析や産業分析、競合他社調査・分析、機能分析、産業規制有無の調査、為替リスク分析など、様々な側面での調査や分析も行いますし、海外の移転価格税制に関わる法規制についても調べ上げる必要があります。

経理経験者や金融機関出身者、英語力を武器にこの移転価格アドバイザリー分野に入る方もおりますが、会計・法規制・経済学を網羅的且つ体系的に学んでいるUSCPAの方が、その知識を土台に早期に業務に順応し、活躍している事例をよく耳にします。

■英語力とグローバル感覚

国境を越える取引があって初めて移転価格という概念が生まれますので、全てのプロジェクトはクロスボーダーとなり、法人や職位、個人によって頻度やシチュエーションは異なるものの、多かれ少なかれ英語の業務が発生します。

移転価格アドバイザリーの仕事では、スタッフやアソシエイトとして入社した場合、英語を使用する場面としては、会話よりも読み書きで使用することが多いです。もちろんシニアやマネージャー等、職位が上になるにつれて会話での英語使用頻度は高まります。

その読み書きに関しても、海外の移転価格関連の法令を原文で調べる、移転価格文書を英語で作成する、英語の財務諸表を読み込む、海外税務当局向けのAPA申請書類を作成するなど、会計・ビジネス・法律に関わる英語を使用する機会が多いため、各人の英語力には差がありますが、それらを英語で学んできたUSCPAはやはり業務への順応が早いです。

また、前述の通り、全ての仕事がクロスボーダーとなりますため、国内のみの業務で完結するわけではありません。海外提携ファームとの連携や、部内には外国籍の人間も多く、クライアントの海外進出先も全世界に渡ります。

そのような環境の中で、日本人独自の感覚(常識や文化、商習慣)に囚われずグローバル感覚を持っていることも重要であることと思いますが、USCPAの方に見られる特性であるグローバル感覚の高さも、移転価格アドバイザリーという仕事との相性の良さに繋がっています。

■ビジネスマインドを持った方が多い

移転価格アドバイザリーという仕事においては、「クライアントのことをしっかりと理解しよう」というマインドがないと務まりません。

個々の抱える業務負荷で一概には言えないものの、スタッフ1名につき、5~10社近くのクライアントを担当し、マルチタスクで業務を進めていく仕事ではありながらも、移転価格アドバイザリーという仕事は、クライアント企業そのものを調査・分析し、しっかりと理解することが第一歩で、それを無視して業務を進めることはできません。

これまで数多くのUSCPAと接してきましたが、経理や監査等の会計方面でのキャリアチェンジ&アップを目指す方も多いのですが、ビジネスや事業に関心を持つ方も多いことと感じております。

実際に監査法人か移転価格で迷われている方に、「会計の論点を突き詰めていきたいのであれば監査法人、ビジネスそのものに関心を持っているのであれば移転価格」と問うと、後者を選ぶ方が3割4割近くいらっしゃったことと、肌感覚ながら感じています。

ビジネスマインドが高い方は、多種多様な業界の企業のビジネスを理解したいという探求心も備わっていることと思います。このマインドを持ったUSCPAであれば、移転価格アドバイザリー業務との親和性も高いことと考えています。

■まとめ

理由として「会計・法規制・経済学等を広く学んでいること」「英語力とグローバル感覚」「ビジネスマインド」を持った方が多い、の3つを挙げさせて頂きましたが、これら3つの要素は、移転価格アドバイザリーの仕事に移る、若しくは仕事をするにあたって必要な要素でもあります。

この分野に転職する場合、必ずしもUSCPA資格や全科目合格が必須というわけではなく、この3つの要素を経験や知識、マインドとして持っているのであれば十分チャレンジできうるものですし、欠けている要素をUSCPAで補えうるものと考えております。

当Topicsでは、移転価格アドバイザリー業務の内容にまで深く触れるまでには至りませんでしたが、移転価格アドバイザリーとUSCPAとの親和性、相性について少しでも理解して頂けたのであれば嬉しく思います。

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