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監査法人の金融監査部門でUSCPAの求人が多い理由

2024年10月11日
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2017年7月22日 / 最終更新日:2024年10月11日

USCPA(米国公認会計士)に合格し、監査法人への転職を考えてネットで求人を検索すると、「金融監査スタッフ」「金融機関向け監査業務」「金融事業部 監査職」という求人が必ず出てくることと思います。

監査法人の監査部門は、細かく区分けすれば公的機関(パブリックセクター)向けの監査部門やIPO企業向けの監査部門もございますが、大きく分けて金融機関向けの監査部門(以下、金融監査部門)と、事業会社向けの監査部門と大別できます。

今(2024年10月現在)でこそ、事業会社向け監査部門や、財務会計/財務報告に関する会計アドバイザリー部門、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)アドバイザリーなど、USCPAの求人を出している部門は多岐に渡っていますが、現在のように監査法人において求人の種類が増えたのは12,3年前の話で、それ以前はUSCPAで監査法人に転職する場合、事業会社向けの監査部門の求人は少なく、金融監査部門がメインで、私が転職サポートを始めた17年前は金融監査部門一択と言ってよいほどの状況でした。

監査法人の金融監査部門では、現在も継続してUSCPAを採用すべく求人を出し積極採用を行っている監査法人が多いのですが、なぜ金融監査部門で長きに渡りUSCPAの採用を行っているのか、その理由について解説していきたいと思います。

■そもそも金融監査部門ってどんなところ?

まずは金融監査部門って何?、というところから簡単に解説していきたいと思いますが、大手監査法人の中でも最も専門性の高い部門の一つで、金融事業部、金融部などど呼ばれている部門の中で、金融機関向けに監査を行っている部門となります。

監査対象としているのは、銀行、証券会社、保険会社(生命保険・損害保険)、アセットマネジメント会社、不動産金融会社、リース会社、信託銀行、信用金庫、クレジットカード会社、ノンバンク等の金融機関及びそれらを傘下に抱えるフィナンシャルグループとなり、モノの流れを見るメーカーや商社等と比較して監査の手続が独特で、金融商品会計や国内外の法規制が絡むこともあって、事業会社向けの監査とは別の専門部隊として金融部門が設置されています。

売上が数兆円クラスの大手金融機関も多く、複雑な取引も多いため、中小監査法人を一つ作れてしまう程の大規模な監査チームが組成することもございます。そのため、中小監査法人や中堅監査法人では対応することが難しく、大手金融機関の監査はほぼ大手監査法人に集約され、金融監査部門を設置しているのは大手監査法人に限られています。

■USCPAの求人が多い理由その①~米国上場の金融機関におけるニーズ

その金融監査部門の中でも花形で人気が高いのが、メガバンク及びそのグループのチームで、中途採用で入社するUSCPAのメインのアサイン先となっています。

メガバンク及びそのグループは、米国ニューヨーク証券取引所(NYSE)に名を連ねておりますが、三菱UFJフィナンシャル・グループは有限責任監査法人トーマツ、みずほフィナンシャルグループはEY新日本有限責任監査法人、三井住友フィナンシャルグループは有限責任 あずさ監査法人が監査を担当している他、メガバンク以外でNYSEに上場している野村ホールディングスはEY新日本有限責任監査法人、オリックスは有限責任 あずさ監査法人が担当しています。(順不同・敬称略)

これらNYSE上場の金融機関の監査においては、米国基準(US-GAAP)での監査も発生(一部IFRSもあり)するため、USCPAが採用されこれらの監査チームに配属されることが多く、監査法人の監査部門の中では珍しく、金融監査ではこれらの監査チームを牽引するUSCPAのパートナーも存在し、ディレクター、(シニア)マネージャーとして活躍されている方も数多く存在します。

■USCPAの求人が多い理由その②~外資系金融機関におけるニーズ

外資系金融機関に関しては、各監査法人とも監査クライアントを公表しておりませんが、外資系金融機関の監査は大手監査法人の金融監査部門が行っております。

外資系金融機関の監査においては、外国人USCPAのパートナーが率いたり、チーム内に外国人が含まれたりすることも珍しくなく、金融機関本社側の海外監査チームとの密な連携も必要になりますので、チーム内及び海外監査チームとのやり取りで英語を使用する機会も多くなります。

また、基幹システムや書類が全て英語であったり、監査先の対応者が外国人で英語対応が必要であったり、英語で記載された海外の金融規制を調査したり、チーム内での公用語が英語であったりするなど、英語力を備えた会計士という観点でもUSCPAを求めております。

■USCPAの求人が多い理由その③~人材の流動性の高さ

監査法人の人事側も頭を悩ませていることですが、金融機関のコントローラー、ファイナンス部門やコンプライアンス部門、コンサルティング会社(金融セクター)など、金融監査の経験を積んだ人材への引き合いが強いため、良い条件で転職していってしまう方も多いのが現状です。

人材の流出が続いているのが現状ですが、金融監査の専門性の高さが故に事業会社向けの監査部門など他部門から異動させることも難しく、外部から人材採用に頼らざるを得ない状況です。USCPAの求人が多い、という観点からはちょっと外れてしまいますが、外部から継続的に一定人数を採用するためには、定期的に合格発表のあるUSCPAは貴重な人材リソースとなっています。

■あとがき

金融監査を行う部門では、十数年以上も前からUSCPAの採用を行ってきたという歴史背景もあって、パートナーやディレクター、シニアマネージャーなどに、日本の公認会計士とダブルホルダーでないUSCPAが少なからず存在しますし、実際に私が12年前に転職を支援し、金融監査への門を叩いたUSCPAの方の中には、現在シニアマネージャーやマネージャーとして活躍している方も数多くいらっしゃいます。

日本国内の監査法人となりますため、公認会計士の方がマジョリティであることは否定できませんが、他の部門と比較した場合、USCPAが根付き浸透している部門であることは間違いありません。

ここ最近では金融機関出身者(所属部署や経験を問わず、リテールでも可)を好む傾向にはありますが、監査法人全体の採用意欲が多少鈍化したとしても採用を継続する部門の一つであると考えております。

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