USCPAの求人動向

監査法人

2017年も昨年と同様に売り手市場が継続している状況で、USCPA(米国公認会計士)有資格者、全科目合格者だけでなく、法人や部門によっては2科目合格を目安とした科目合格者の採用も行われています。

2005年から2008年までは金融商品取引法の制定に伴うJ-SOXブームを背景に中途採用は盛り上がりを見せ、公認会計士試験の短答式試験合格者やUSCPA(米国公認会計士)の科目合格者を対象に、中途採用を行っていた時代でした。2008年のリーマンショックを皮切りに、公認会計士試験の制度変更と合格率引き上げに伴う合格者の劇的な増加、内部統制の構築・整備がひと段落し運用・改善のステージに入ったことも影響し、各監査法人では人員過多が目立つようになり人員整理を行う中、定期採用、中途採用ともに冷え込んだ冬の時代が続きました。

2012年頃から、監査プロセスの厳格化、各種アドバイザリーサービスの拡充等を背景に、長く続いた冬の時代は終焉を迎え、中途採用を再開し始める法人及び部門も出始めました。公認会計士を志願する人間が減少の一途をたどったことも相まって、以降は慢性的な人手不足が続き、定期採用、中途採用ともに各法人で積極的な採用が続いています。

2016年は若干増加はしたものの、公認会計士試験の合格者及び受験者の減少から定期採用だけでは採用が追い付かず、中途採用の比重が大きくなっています。大手から中堅・中小監査法人まで、公認会計士及びUSCPA(米国公認会計士)を中心に中途採用を積極的に行っている他、大手監査法人のアドバイザリー部門では、有資格者や資格試験合格者に限らず、IFRS、リスクマネジメント、アクチュアリー、金融規制対応等、各分野の専門家やそれらのバックグラウンドを有する人材の採用も行っています。

特にUSCPA(米国公認会計士)に関しては、米国に上場している企業及び金融機関向けの監査、海外に子会社を持つ企業の監査、海外からのリファーラル業務、会計基準の組替支援、IFRS導入などを行う部門を中心に中途採用を活発に行っており、2015年頃から科目合格者採用や学習中のトレーニー採用を行う監査法人も出始めております。

近年は相次ぐ監査クライアントの異動を背景に、大手監査法人の中でも採用を活発化し募集の選考水準を下げている法人と、募集を控えている法人とで採用温度感の差が原著に表れ始めています。監査法人全体としては、2017年現在も売り手市場が続いていることは間違いございませんが、監査法人や部門ごとで採用基準が大きく異なるため、転職活動をされる際には、法人及び部門ごとの採用ニーズをしっかり把握しておくことが転職成功のキーポイントになることと思います。

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税理士法人

2017年は昨年と比較して、USCPA(米国公認会計士)の採用は全体として少し陰りが見られ、昨年は大手税理士法人の国際税務部門、特に移転価格アドバイザリー部門で大量に人員採用を行ったため、全体として昨年よりも選考基準を引き上げた採用活動となっている状況です。法人や地域によって採用意欲が異なり、昨年以上に採用に力を入れている法人もあり、国際税務や移転価格税制に関連するプロジェクトが増えている現状を加味しますと、昨年採用した人材の教育が終わり定着する時期、且つ年末及び年度末の繁忙期前、目安として秋口頃には積極的な採用活動を再開する可能性も十分考えられます。

国際税務や移転価格アドバイザリー部門に限らず、税理士法人全体としての採用動向としては、税理士試験の受験者数、合格者数、合格率いずれも5年連続で減少していることが影響し、人手不足、すなわち売り手市場が続いている状況です。大手税理士法人でも、過去は税理士試験4科目以上の合格が書類選考に通過する基準であったのですが、現状は税理士試験2科目以上で書類選考に通過するケースも見られ始め、選考基準を低く設けて採用活動を行っています。

また、会計・税務・労務等のサービスをグループ内で一気通貫で提供するビジネスモデルが定着し、会計コンサルティング会社に併設される中型の税理士法人でも、事業拡大に伴い、税理士及び科目合格者の採用を積極的に行っている他、独立系の準大手税理士法人、資産税等の特化型税理士法人でも人手が足らない状況が久しく続いている状況です。

USCPA(米国公認会計士)に関しては、主に大手税理士法人の国際税務部門、特に移転価格アドバイザリー部門における採用が中心となりますが、リーマンショック後も一定人数の採用を継続して行ってきましたが、2010年の税制改正によって移転価格に関する税務調査の際に提出を求められる書類が明確化され、その後の更なる改正で「移転価格文書化(Documentation)」が義務化されたという背景がございました。

現在は「BEPS」というグローバルな要因が採用の背景にございますが、多国籍企業による租税回避行動が問題視されたことを端に、OECD(経済協力開発機構)とG20が進めてきた「BEPS行動計画」の最終報告書の取り纏めが2015年9月になされ、国際租税条約及び移転価格税制の枠組みを各国が急ピッチで整備しつつあります。国際租税分野は激変の時代を迎えていますが、多くのグローバル企業は国際税務や移転価格の専門家を頼らざるを得ない状況となっており、その相談依頼に対応するために積極的な人員採用を行っております。

一時的には採用は控えめではあるものの、採用意欲の波が短期間で上下する分野となりますので、採用意欲の波によっては、USCPA全科目合格の前後を問わずアプライを考えた方が良いと考えています。

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会計・M&A・事業再生コンサルティング会社

2017年も採用意欲は引き続き高いものの、昨年と同様に採用時に求める人材スペックも高く、必ずしもUSCPA(米国公認会計士)の資格保有、全科目合格のみで転職できる業界ではありません。

会計コンサルティングに関しては、IFRS導入、会計基準の組替支援(IFRS、USGAAP)、経理業務改善支援、決算早期化などの領域で、大手総合系コンサルティング会社や、公認会計士が立ち上げた中小規模のコンサルティングファームにおいてUSCPA採用ニーズはあるものの、会計分野における実務経験やプロジェクトマネジメント経験(領域問わず)など、USCPAに加えて強みとなる要素が必要です。

M&A・事業再生分野に関しては、中途採用時の募集の多くは、M&A・事業再生コンサルティングそのものの経験者や投資銀行出身者は言わずもがなですが、監査法人での会計監査経験、類似したコンサルティング・アドバイザリー経験、大手企業での経理財務経験等を求める傾向が強い状況です。ただし、これらの経験を土台として持っている、且つUSCPA(米国公認会計士)資格及び全科目合格であれば、採用可能性が格段に高まることは間違いありません。

大型のM&A案件の多くはBig4系の大手FASコンサルティング会社に集中しますが、大型案件はグローバルで行われるクロスボーダーM&Aとなっており、採用時にも英語力を要求されることが多いのですが、USCPAは会計を中心に法務や税務を広く理解しているだけでなく、個人差はあれど英語にも一定の素養があると見なされます。また、難関資格に合格するだけの自己管理能力や向上心の高さもプラス要素として大きく働きます。

M&A・事業再生コンサルティング分野の中で、財務デューデリジェンスやバリュエーション(株式価値、事業価値、無形資産等)、モデリングなどを行うトランザクションサービスにおいては、会計士資格保有者を中心とした採用活動を行っており、特に英語のできる公認会計士、監査や企業経理財務出身のUSCPA(米国公認会計士)に対する引き合いは強いです。

過去には若手の未経験者募集を行っていた時代もございましたが、同様の募集は出にくいことと考えています。現状で経験が不足していたとしても、USCPA合格後の転職先次第では、数年経験を積んだ先に当分野へ転職することも十分可能であることと思います。

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中堅・中小会計事務所

町の税理士事務所のような事務所が日本国内には数多く存在しますが、中堅・中小会計事務所の中でも、USCPA(米国公認会計士)の採用を行っている事務所にフォーカスしてお伝えしたいと思いますが、USCPA有資格者や全科目合格者に限らず、USCPA科目合格、学習中の方も対象に採用を行っている事務所もあり、事務所数や求人数自体は少なく採用人員に限りはあるものの、2017年も引き続き積極募集を行っている状況です。

外資系企業のインバウンド案件を扱う会計事務所に関しては、2008年9月のリーマンショック後には外資系企業の撤退や縮小が相次ぎ、採用活動を控えていた事務所が多かったものの、日本へ進出する外資系企業の数も回復傾向にあり、2013年頃から、外資系企業から経理・給与計算を請け負っている会計事務所で採用を再開し始めています。

また、日系大手グローバル企業だけでなく、日系の中堅・中小企業の海外進出も加速化しており、そのような企業の税務顧問を行っている中堅・中小の会計事務所においても、アウトバウンドの海外案件が徐々に増加しつつある中で、USCPAの採用を考えている事務所も増加傾向にあると言えます。

中堅・中小の会計事務所では、インバウンド、アウトバウンドの双方において募集を行うケースがございますが、経験を重視したピンポイントの募集や、英語力重視の募集など、その事務所が抱える組織人員やニーズによって募集の要件は異なります。大きなクライアントが入ったタイミングなどは、複数の人員をまとめて採用することもございますので、応募の際はタイミングを逃さないよう注意が必要です。

経理財務・内部監査・経営企画

事業会社内の経理財務・内部監査・経営企画等の管理部門においては、業種や職種を特定しない日本全体の転職市場とほぼ変わらず、2016年から続く売り手市場は2017年も変わらず続いております。

経理財務・内部監査・経営企画のいずれにおいても、USCPAを採用、若しくは採用時にUSCPAを高く評価する企業は、海外(特に米国)に子会社を持つ日系グローバル企業と外資系企業に二分されますが、全体的に日系グローバル企業はスタッフ層や中堅社員クラスを中心とした採用を行っているのに比べて、外資系企業ではスタッフが行うような仕事の機能を日本には置かずに海外に設ける、若しくは派遣社員で対応するなどの背景から、それを管理・コントロールできるようなマネージャー以上の募集が増えている傾向にあります。

経理財務部門においては、上記の外資系企業の背景が顕著に表れ、求人数自体は増加しているものの、マネージャー以上の求人やFP&A(Financial Planning & Analysis)の求人が大半を占めるようになり、経験や資格、英語力、SAPなどのERP使用経験など、採用時に求める要件も厳しめに設定されている求人が目立っております。一方で、日系グローバル企業では経理財務部門で実務人員が慢性的に不足しており、スタッフや中堅社員クラスを求める企業が大多数となります。

また、IFRSを適用済み、適用を表明している会社は130社(2017年2月時点)を超え、IPO時に日本基準ではなくIFRSで行うベンチャー企業も2014年から数少ないながらも出始めており、今後はIPO予定の会社でUSCPAを求めるケースも増加していくことと考えています。

内部監査・経営企画部門に関しては、経理財務と比較し求人数は圧倒的に少なく、実務経験重視の採用を行う傾向がございます。ただし、資格が最終的な採用内定の決め手となることも多く、USCPAは一つの武器として効力を発揮することは間違いありません。内部監査・経営企画ともに日系グローバル企業での募集がメインとなりますが、ヘッドクォーターの機能を日本に有するような、一定規模以上の外資系企業においても募集を行っています。

海外会計事務所

地域や国によって差はあり、全ての地域や国を網羅的に情報収集するのは困難でありますが、2016年に続きUSCPA(米国公認会計士)の採用に積極的な事務所は増加傾向にあります。

海外の会計事務所において、現地に進出する日系企業に対して、現地の法令や規定、会計基準に即した会計・税務サービスを中心に、進出・撤退、人事・労務、法務等の経営管理に関わる相談対応及び問題解決を行うことが主要な業務となりますが、海外では日本の公認会計士や税理士よりもUSCPA(米国公認会計士)の方が知名度が高く、USCPAとして海外現地事務所に転職し活躍されている方も数多くおります。

米国に関しては、トランプ政権発足に伴い移民が制限されることが懸念材料としてございますが、そもそもここ2,3年の間は就労ビザの認可枠以上のビザ申請があり、2016年は認可枠の4倍ほどの申請がなされたため、申請後の抽選で落ちてしまうケースが増加し、日本から人員を採用しようという事務所は数少ない状況です。ただし、日系企業が多く進出している西海岸、東海岸の主要都市だけでなく、製造業が集まる内陸都市においても、会計の分かる日本人を雇い入れたいというニーズは非常に強く、就労ビザよりも取得しやすい研修ビザ申請を前提に、インターンを受け入れている中小の事務所は増加傾向にあります。

また、日系企業の進出先として、中国から東南アジアやインドへ移って久しく、北京や上海、香港などでも採用ニーズはあるものの、ここ数年間はシンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドなどの東南アジア、南アジアでの採用ニーズは根強く、昨年2016年からは、ミャンマーやインドネシアでも採用を始める事務所が出て来ており、東南アジア全域に広がりつつあります。シンガポールや香港などでは、就労するにあたって就労ビザ取得に際して一定の条件はあるものの、他の地域や国々では基準となる条件は緩く就労ビザが取得しやすい状況です。

SACTでは海外会計事務所の求人の取り扱いには限りがございますが、全世界に散らばるUSCPAや公認会計士とのネットワークから情報や生の声を頂いております。海外事務所での仕事内容や現地での生活環境、リスクと心構え、成功体験や失敗体験等、もしお聞きになりたい方がいらっしゃられば、お気兼ねなくご相談ください。

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